生活経済ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー。
更新日:2023年09月01日
キャッシュレス決済を使う人が増えています。小銭で財布が重くならないし、支払いがスムーズに済むので便利ですね。社会全体としてもキャッシュレス化の方向に進んでいるので、現金派の人も無視はできませんよ。キャシュレス決済の上手な使い方と家計管理の方法をご紹介しましょう。
キャッシュレス決済は、主にカード型とスマホアプリ型があり、カード型はさらにクレジットカード、デビットカード、ICカード(電子マネー)に分かれます(表1参照)。
種類 | サービス例 | 特徴 | |
---|---|---|---|
カード型 | クレジットカード | VISA、マスター、JCBなどの国際ブランドと、その提携カード | 申込時に審査があり、カード会社が発行する。後払い |
デビットカード | VISAデビット、JCBデビット、Jデビットなど | 銀行口座と紐づけたカードを銀行が発行する。同時払い | |
ICカード(電子マネー) | Suica、PASMO、nanaco、WAONなど | 事業者が発行し、現金やクレジットカードなどから事前にチャージする。原則、前払い | |
スマホアプリ型 (スマホ決済・コード決済) |
PayPay、楽天ペイ、d払い、auペイ、メルペイなど | スマホにアプリをダウンロードし、銀行口座、クレジットカードなどと紐づけて支払う |
著者作成
カード型から見ていきましょう。
このように、キャッシュレス決済と一口に言っても、種類により、実際に自分のお金が動くタイミングが違います。
スマホアプリ型は、ここ数年で急速に利用者や利用額を増やしています。2022年には電子マネーを抜いて利用額で2位に躍り出ました*。財布がカードでかさばることもなく、いつも使っているスマホで支払いができます。1台のスマホに複数のアプリを入れて併用できます。スマホ決済と呼んだり、QRコードやバーコードを読み取って支払うのでコード決済とも呼ばれています。
スマホアプリ型では、支払いのお金を用意する方法が複数あります。①事前に現金や銀行口座、クレジットカードからチャージしておく、②デビットカードのように紐づけた銀行口座から支払いと同時に引き落とす、③紐づけたクレジットカードからその都度支払う、主にこの3つ。どれを選ぶかによって、実際に自分のお金が動くタイミングが違ってきます。新しいイメージのスマホアプリ型も、お金を動かす仕組みはカード型と同様です。
*経済産業省のサイトより
このような仕組みのキャッシュレス決済。現金と比べて、どんなメリット・デメリットがあるかをまとめてみました(表2参照)。
支払方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
キャッシュレス |
など |
など |
現金 |
など |
など |
著者作成
キャッシュレスといいながら現金をチャージするタイプもありますが、ATMに足を運ぶ回数は減るでしょう。夜や土日・祝日に現金を引き出して手数料を払っていた人は、その分が節約になります。
キャッシュレス決済ではポイントが貯まりやすいことも見逃せません。貯まったポイントを支払いに使うことで実質的な割引になります。ポイント還元率は、0.5%を基本に、使うお店や支払い方法により2倍、3倍などと上がります。低金利の現在、定期預金の金利より高くなるケースが多く、ポイント目当てにキャッシュレス決済を使う人も多くなっています。スマホアプリ型の中には、携帯キャリアやクレジットカードなどをグループ化して、共通ポイントを貯めて使えるポイント経済圏を形成しているものがあります。同じ経済圏の中で買い物などをすると、より多くのポイントを得られます。
また、スマホアプリ型は、支払いだけではなく、事前にチャージした残高を同じアプリを使う人に送れる送金機能もあります。友達との割り勘や家族内でのお金のやり取りなどに利用できます。手数料無料のところがほとんどなので、送金の手数料を節約できます。
ただし、スマホアプリ型やポイント還元の分野は競争が激しく、ポイント還元率の変更なども予想されます。無理のない範囲で使ってポイントを貯め、貯まったポイントはなるべく早く使うのが確実な節約につながります。
一方で、複数のキャッシュレス決済を並行して使っていると、自分のお金なのに、いくら使って、どこにいくらあるのか、お金の流れが見えにくくなるデメリットがあります。
上手に使いこなすには、家計の支出のうちキャッシュレスにするものと、キャッシュレス決済の種類をあらかじめ決めておくことです。
例えば、
これは一例ですが、日々の生活と、お金を使う場面を想定しながら、ご自身の場合を考えてみてください。
その際、キャッシュレス決済の種類を自分が使いやすいものに絞り込みます。よく利用する鉄道、スーパーやコンビニ、駅ビル、ネットショッピングサイト、金融機関などをもとに選ぶといいでしょう。クレジットカードは1~2枚。2枚以上使うなら、生活費用と仕事用、生活用と趣味用などと使う目的で分けます。ICカードは交通系を1枚。よく使うお店がある人は流通系を1枚プラスします。スマホ決済はポイント経済圏を意識して2種類。多くて3種類までが使いこなせる範囲ではないでしょうか。
そして、生活費用のクレジットカードで使うのは月に○万円、スマホ決済の○○ペイは銀行口座から○○〇〇円を月1回チャージしてその範囲で使うなど、それぞれに予算を決めておきます。
その上で、最低でも月に1回は明細や履歴を確認します。時系列で記録が残るのもキャッシュレス決済のメリット。ダウンロードや印刷ができるものは手元にデータを残しておくと家計簿代わりになります。家計簿を付けている人は記帳がラクになるでしょう。忙しい人は、インターネット上で家計簿アプリと連動させると自動的に費目分けまで行われ、収支を確認できます。
こうして使ってみると、支出の大部分をキャシュレスにしたほうが、収支管理がしやすいことに気が付くでしょう。安全に、上手に使いこなせれば、生活の合理化を実現できます。
まとめると...。
うまくいかないときは修正しながら、お金の流れを整えていきましょう。
簡単に支払いができるので、現金と比べてお金を使った実感を得にくく使い過ぎになりやすい点には注意が必要です。特に後払いのクレジットカードは、カード型として使う以外にもスマホ決済など他のキャッシュレス決済にも紐づけられるので、予算管理を厳密に。また不正な利用や出金の被害に遭わないためには、セキュリティ対策も必須です。身に覚えがない支払いや送金がないか履歴をこまめに確認すること、パソコンやスマホにはセキュリティソフトを入れておきます。
急速に進むキャッシュレス化。いずれ現金はなくなるのでしょうか。キャッシュレスに未対応のお店がありますし、災害や通信障害が起きたときなど現金でなければ使えないケースも想定されます。当面は現金もお財布に入れておきましょう。
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