生活経済ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー。
更新日:2024年08月30日
結婚、出産、住宅購入など人生にはいくつか大きな節目と、それに続くステージがあります。変化を前にして、身が引き締まり期待感が高まる一方で、不安を感じる人もいるでしょう。
そんなとき、ぜひ作りたいのがライフプランシートです。
ライフプランシートは、現在を起点に、何年後にどんなことが起きるか、あるいは起きそうかというライフイベントや、自分がどうしたいか、どうありたいかを数十年の長期にわたって計画するものです。
例えば、もうすぐ結婚する人なら、子どもを持つか持たないか、持つなら産みたい時期、住宅を購入したいならその時期を記入します。すでに結婚して子どもがいるなら子どもの進学・進級の時期がわかるので記入します。住宅を購入済なら住宅ローンが終わる時期、40代以降の会社員なら定年退職の時期、個人事業主ならいつまで仕事をするか、老後の過ごし方などを記入します。
そして忘れてならないのがそれぞれのライフイベントの費用を見積もることです。実は、この費用を見積もる作業は意外と難しく、なかなかプラン作りが進まない原因にもなります。
まずは、費用や実現できるかどうかよりも、自分がこうありたいと思うことを自由に描くつもりで作ってみましょう。計画する期間は20代~30代の人なら65歳まで。現役時代に実現したいことを中心に記入します。40代以降の人なら90歳まで。現役時代の後半は何をしたいか、65歳以降はどのように過ごしたいかを記入します。中には、生涯現役でこうありたいという希望を持っている人もいるかもしれません。
大まかなプランができたら、そこからじっくり費用についても調べて書き込んでいきます。時間があるときに追記しながら、イベントの時期をずらしたり、費用や内容を修正したりしながら、納得がいく形に完成させます。
出来上がったライフプランシートは、家計簿や手帳に挟んでおくなどして、ときどき見返しましょう。予定通りに進んでいるでしょうか。
若い人ほど、先行きは不確実ですから、作ったプラン通りにいくとは限りません。40代以降の人は現実的になってそもそも実現可能なプランを考える人が増えそうです。それでいいのです。こうありたいという思いを実現するにはどうしたらいいか、いくら必要か、考えたり調べたり行動したりしながら現実と折り合いをつけて進んでいくことで失敗を防ぐことができます。予定よりも子どもが生まれるのが遅かったり、子どもの学費が想定以上にかかったり、住宅購入の予算を下げることになったり...。自分の現実に合わせて対応していくことで、ひとつひとつのライフイベントを無事に乗り越えて先に進むことができます。
ライフプランシートを作ることのメリットは、これからの人生にかかる費用を長期的な視点で把握して客観的になれること、短絡的になって判断を誤るのを防げることです。
ライフプランシートは、現実とかけ離れてしまったり、大きな節目が訪れたりしたら作り直しましょう。ずっと一人で生きるつもりだったのに結婚することになった、高齢出産で子どもを授かった、親の介護が必要になったなど、人生何が起こるかわからないものです。自分自身の希望が第一ですが、親族のライフイベントが自分の生活に影響することもあります。作り直す場合も、元のプランがあることで、ゼロから作るよりも容易ですし、どう修正するかを判断しやすくなります。
何度か作り直しながら活用するライフプランシートですが、過去の分も保存しておけば、どんなことを考え、その後にどんなことが起きて、どう進んできたかを振り返れる資料であり思い出になります。
野球の大谷選手が高校生のときに作った人生設計がテレビなどで一時期、話題になりました。人生設計は若い時に行うイメージがありますが、ライフプランシートは就職、結婚、子どもの誕生、転職などライフステージが変化したときや、50代~60代になっても作ることで、これからどう過ごしたいかを考えるきっかけになります。費用と合わせて、暮らし方の希望もメモしておくといいですね。
また、生涯収入のうち、若い時期はまだこれから入ってくる部分が大きいので、軌道修正がしやすいものです。しかし年齢が上がると、すでに受け取った収入の方が多くなりますし、仕事を引退して年金生活に入ったら、よりしっかりとお金の管理をする必要があります。退職前後にライフプランシートの形で老後の資金計画を立てることは老後を経済的に安定して過ごすために重要です。
さらに、ライフプランシートをもとに、具体的な毎年の収支を記入するキャッシュフロー表まで作成できると、今後のお金の流れがわかりやすく見えてきます。
ライフプランシートがあればキャッシュフロー表を作るのは比較的簡単です。下の例のように、家族も含めてライフイベント費用や毎年の収支、貯蓄残高を記入しましょう。
より具体的にこれからのお金の流れが見えてきます。収支が苦しくなる時期や貯蓄を取り崩す時期を把握できます。節約したほうがいいとわかっていても、ついお金を使ってしまう人も、キャッシュフロー表で赤字になる年があることを見ると、気持ちが引き締まるのではないでしょうか。
人生に大きな変化が起きて目の前のことで精いっぱいのときこそ、少し長い目で自分や家族のこれからを客観的に考えることが大事です。そのための材料として、ライフプランシートやキャッシュフロー表が役に立ちます。手書きでも、エクセルを使っても、作りやすい方法でかまいません。
人生の節目に立っている人はもちろん、平穏な日々を過ごしている人も、おだやかな日々がこれからも続いていくよう、ライフプランシートを作ってみませんか。
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