生活経済ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー。
更新日:2024年12月10日
「子育てにはお金がかかる」、そんなイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、具体的な金額まで把握している人は少ないのではないでしょうか。
子育て費用は、大きく2つに分けられます。食費や衣服費など子どもの生活のための養育費と、学校の授業料など学習のための教育費です。子どもが生まれて、成長し、自立した大人になるまでには20年前後かかりますから、その間の費用を合計すればかなりの金額になることが想像されます。とはいえ、一度に払うわけではなく、毎月あるいは毎年など、必要な分をその都度払っていきます。子どもの成長過程に沿って、年間ではどれくらい払っているのか、調査データから確認してみましょう。
子どもの生活費に関するデータは実はあまりありません。実際に子育てをしている人もどれくらい使っているか把握しづらいと思います。詳細な家計簿を付けているとしても、食費や日用品などを親と子どもに分けてはいませんよね。そのため、少し古いデータになりますが、平成21年のインターネット調査(表1参照)から紹介します。食費や衣類、生活用品、医療費、子どもの行事、レジャー費まで含めた養育費は、未就園児で年約55万円、年齢が上がるとだんだん増えて中学生で約73万円です。
ここ数年は物価が上がっているので、その分、高くなっている可能性があります。ざっくり年間60万円~80万円程度と考えてよさそうです。12か月で割ると、月当たりは5万円~6.7万円になります。これは全国平均の数字ですから、当然ですが、地域により、また家庭により金額には差があります。この後、紹介するデータも、この前提で見てください。
表1 子どもの養育費 1人あたり年間 未就園児~中学生
衣類・服飾雑貨費、食費、生活用品費、医療費、お祝い行事関連費、レジャー・旅行費の合計
(単位:円)
未就学児 | 小学生 | 中学生 | |
---|---|---|---|
未就園児 | 保育所・幼稚園児 | ||
553,442 | 574,522 | 651,492 | 733,182 |
「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」(内閣府)をもとに作成
この調査は中学生までで、高校生の生活費はデータがありません。年齢が上がるにつれて子どもの生活費は増えているので、中学生より少し多めと考えればよさそうです。
大学生の生活費は、進学先により異なりますが平均は年間約68万円(表2参照)。自宅通学、学生寮、下宿も含めた平均です。大学生になると食費や日用品などの生活費の一部を自身のアルバイト収入から出すケースもあると考えられます。そのため親が養育費として負担する金額はこれよりも少ないと考えられます。
表2 子どもの養育費 1人あたり年間 大学生
(単位:円)
区分 | 生活費 | |||
---|---|---|---|---|
食費、住居・光熱費 | 保健衛生費、娯楽・し好費、 その他の日常費 |
小計 | ||
大学学部(昼間部) | 国立 | 521,000 | 340,900 | 861,900 |
公立 | 429,600 | 323,800 | 753,400 | |
私立 | 288,700 | 342,800 | 631,500 | |
平均 | 335,900 | 341,500 | 677,400 |
「令和4年度学生生活調査結果」(日本学生支援機構)より抜粋 自宅、学寮、下宿を含めた平均
これらのデータから、年齢にもよりますが、子どもの養育費は平均的に年間60万円~80万円程度と言えそうです。
次に教育費のデータを見てみましょう。子どもの学習費調査(表3参照)によれば、高校までの教育費は進学した学校が公立か私立かで異なります。教育費は、在籍する学校に払う授業料などの学校教育費と、各家庭の判断で払う習い事や塾代などの学校外活動費に分かれます。公立なら学校教育費はあまりかかりません。公立幼稚園は年間約6万円、公立小学校は年間約7万円、公立中学校は年間約13万円、公立高校は年間約31万円。別途、給食費がかかりますが、合わせても年間7万円~17万円。月当たりは6000円~1万4000円程度です。家計の大きな負担になるほどの金額ではありません。一方、私立の学校教育費は、小学校なら96万円で公立の約14倍、中学は106万円で約8倍、高校は75万円で約2倍の費用がかかっています。学校外活動費も私立の方か高くなっています。
小・中学校は義務教育なので公立が一般的ですが、都市圏などでは私立に進学する家庭もあります。高校では、進学先が公立か私立かは、子どもの希望や親の考え方だけではなく受験の結果に左右されます。公立に進学したかったけれど不合格になり私立に進学というケースもあります。国では様々な少子化対策を打ち出していて、その1つに私立高校生の授業料を軽減する助成があります。年額約40万円の給付が受けられます(所得制限があり、令和6年度現在)。国の助成にさらに上乗せの給付を行う自治体もありますから、子どもが中学生のうちに国や自治体の制度について確認しておくことをお勧めします。また、なるべく早い時期から、家計の状況や子どもの能力などをもとに、進路について検討しておいた方がいいでしょう。
各家庭の判断で出す学校外活動費は、授業料ほどには私立と公立での差は大きくはありません。授業料は学校により決まった金額を払うことになりますが、学校外活動費についてはいくらかけるかを親が決められるので、必要かどうかをしっかり判断したいものです。
表3 子どもの教育費 幼稚園から高校まで 1人当たり年間
「令和3年度子供の学習費調査」(文部科学省)より抜粋
進学する学校や学部によっては、最も教育費が高くなるのが大学です。私立大学は学部により年間の授業料が異なり、平均すると83万円~290万円(表4参照)。授業料に加えて施設設備費も年間14万円~88万円かかります。
国公立大学は学部による授業料の差はありません。年間約54万円(表5参照)。ただし、国立大学は国が示す標準額をもとに各大学で決めることができ、東大が授業料を10万円ほど値上げすると報道されました。国公立は私立よりも安いのですが、今後はその差が小さくなるかもしれません。また、私立、国公立いずれも入学時には22万円~108万円の入学料を納付します。
大学の授業料などのデータもあくまで全国的な平均値なので、希望する進学先があるなら、その大学のサイトなどで入学料や授業料を確認するとより確実な金額を知ることができます。
また、大学の学費について考えるときに忘れがちなのが受験費用です。何校受験するか、滑り止めの大学の入学料がいくらかにより実際の支払い額には幅がありますが、大学の入学金や授業料とは別途、数十万円を受験費用として予定しておいた方がいいでしょう。
表4 子どもの教育費 私立大学の納付金 1人当たり
(単位:円)
区分 | 授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
文科系学部 | 827,135 | 223,867 | 143,838 | 1,194,841 |
理科系学部 | 1,162,738 | 234,756 | 132,956 | 1,530,451 |
医歯系学部 | 2,863,713 | 1,077,425 | 880,566 | 4,821,704 |
その他学部 | 977,635 | 251,164 | 231,743 | 1,460,542 |
全平均 | 959,205 | 240,806 | 165,271 | 1,365,281 |
「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」(文部科学省)より抜粋
表5 子どもの教育費 国・公立大学の納付金 1人当たり
(単位:円)
区分 | 授業料 | 入学料 | 合計 |
---|---|---|---|
国立大学 | 535,800 | 282,000 | 817,800 |
公立大学 | 536,191 | 374,371 | 910,562 |
※国立大学は国が示す標準額
「国公私立大学の授業料等の推移」(文部科学省)より抜粋して作成
大学は、授業料などの費用が高校までよりも高めということだけではなく、子育ての仕上げともいえる時期であり、子どもの経済的な自立につながる就職に大きく影響します。高校卒業後は8割以上が大学などの高等教育に進む(「令和4年度学校基本調査」(文部科学省))時代です。子どもの成長を見守りながら、進路を検討し、高等教育で必要になりそうな教育資金の準備をなるべく早めに進めていきたいですね。
資金準備の方法については【2024年最新】お金が貯まる仕組みの作り方に記載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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